人生は奇跡ではない、軌跡である。
山へ空へ摩訶般若波羅密多心経
うしろすがたのしぐれてゆくか
へうへうとして水を味ふ
ほろほろほろびゆくわたくしの秋
あるがまま雑草として芽をふく。
人々に幸福あれ、災害なかれ、しかし無常流転はどうすることも出来ないのだ。
ふるさとはあの山なみの雪のかがやく
笠も漏り出したか
生まれた家はあとかたもないほうたる
無理をするな、素直であれ。すべてがこの語句に尽きる、この心構えさえ失わなければ、人は人として十分に生きてゆける。
鴉啼いてわたしも一人
ゆうぜんとしてほろ酔へば雑草そよぐ
ああ酒、酒、酒、酒ゆえに生きても来たが、こんなものになった。酒は悪魔か仏か、毒か薬か。
彼等は理解しようと努めずして、理解することを恐れている。理解は多くの場合に於て、融合を生まずして離反を生むからだ。反き離れんとする心を骨肉によって結んだ集団! そこには邪推と不安と寂寥とがあるばかりだ。
けふもいちにち風を歩いてきた
また見ることもない山が遠ざかる。
また一枚脱ぎ捨てる旅から旅
笠にとんぼをとまらせてあるく
また見ることもない山が遠ざかる