一枚の葉書きを君に書くための旅かもしれぬ旅をつづける
長電話、すればするほど会いたくて、切れない電話、置けない受話器。
落ちてきた雨を見上げてそのままの形でふいに、唇が欲し
砂浜のランチついに手つかずの卵サンドが気になっている
水平線を見つめて立てる灯台の光りては消えてゆくもの思い
愛人でいいのとうたう歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う
我だけを想う男のつまらなさ 知りつつ君にそれを望めり。
まっさきに気がついている君からの手紙いちばん最後にあける
「また電話しろよ」「待ってろ」いつもいつも命令形で愛を言う君
きつくきつく我の鋳型をとるように君は最後の抱擁をする
焼肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き
「です・ます」で話し続けている君の背景にあるファミリーランド
泣いている 我に驚く我もいて 恋は静かに移ろうとする。
大きければいよいよ豊かなる気分 東急ハンズの買物袋
思い切り愛されたくて駆けてゆく六月、サンダル、あじさいの花
「もし」という言葉のうつろ人生はあなたに一度わたしに一度
この星のオアシスとしてゆるやかに眠れる水を湿原と呼ぶ
寄せ返す波のしぐさの優しさにいつ言われてもいいさようなら
生ビール買い求めいる君の手をふと見るそしてつくづくと見る
思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ